プロパガンダ

初版は20年前という古めな本。
大衆がいかにして発信されるメッセージを受け入れているのか
文中に出てくる例が具体的で豊富にあり、
アメリカの内容や政治的な内容も多いが、
当時よりも情報が氾濫している今現在の暮らしにも通じる話として読める。
ラベル付けや自分を説得する手法はチームビルディングにおいても有効な方法に思えた。

プロパガンダの定義

本書におけるプロパガンダの定義

プロパガンダという語は20世紀初頭頃よりよく見られるようになった。
最初は、主として嘘や騙しによって偏った考えや意見を流布させる、という意味として定義されていた。
学者達の研究により、騙し以上のものを持つことが多いと認識されるようになり、
シンボルや個人の心理を操作することによる大衆「暗示」や大衆説得を意味するようになった。

プロパガンダの目的

特定の観点を受け手に伝達すること
受け手がその立場があたかも自分自身のものであるかのように
「自発的に」受け入れるようにすることにある。

説得に至る道筋

周辺ルート

メッセージの受け手は、内容に注目しない

説得されるためには、
発しているメッセージに周りの人が賛成しているかどうか、
自分が意見に同意することに伴う快楽や苦痛など
単純な手掛かりによって決まってくる。

何か別な事をしながら、興味がない議論を脇で聞いているような場合

中心ルート

提示された情報のメリットを慎重に考えようとする。
メッセージの受け手は積極的に反論をいう。
質問して回答を求める。
新たな情報を欲しがったりする。

説得されるためには、
メッセージが上記のような吟味に耐えられるかどうか。

人間の情報処理能力には限りがあるので、
なるべく問題を単純化する周辺ルートを採用することが多い。
プロパガンダは、周辺ルートを使用するように促している。

情報過多なインターネットやテレビの15秒CMのような環境は、
深く考えることを困難にしている。

言葉の魔術

「新しい」「素早い」「やさしい」「向上した」「いま」「突然」「驚くべき」「発表する」
が含まれているとその商品がよく売れる

「脂身25%」より「赤身75%」が好意的に受け取られる。

ラベル付け

シカゴの小学五年生に対し、身の回りを整理整頓するように、ごみを散らかさないように説得を試みた。
ある児童たちには、整理整頓する重要性を伝え、
別な児童たちには、自分たちがきちんとしていて、小ぎれいなクラスの一員であることを繰り返し伝えた。
その結果、小ぎれいだというラベルを与えられた児童たちの方が、
重要性を伝えた児童たちより、3倍も多くゴミをゴミ箱に捨てるようになった。

ヒューリスティック

課題解決で用いられる単純な手掛かり、ルールのこと。
・商品パッケージ
 子供向け・・・鮮やかな色使いで漫画のキャラクターや子どものおもちゃが描かれている
 天然素材100%・・・土色系の色調、収穫前の青々とした穀類が描かれている
・論拠がたくさん含まれる長いコピーの方が効果がある。
・テレフォンショッピングなどでよくある大きな拍手や歓声は「社会的コンセンサス」
 みんなが受け入れている。だからあなたもそうすべき!ということを示す
・バラエティ番組の笑い声なども同様
・話してが自身に満ちているように見えると、話の内容を受け入れる傾向が強い。
 言葉の間違いが少ない、威厳のある口調、きちっとした姿勢なども説得力が増す。
・「正しい」シンボル(国旗など)や専門用語を盛り込むことで価値あるメッセージだと知らせる。

ヒューリスティックによる判断が行われる条件

1.その問題を注意深く考える時間が十分にないとき
2.情報が多すぎて、十分に処理できないとき
3.その問題が自分にとってさほど重要でないと考えるとき
4.意思決定に用いる他の知識や情報がほとんどないとき
5.その問題と直面した際、特定のヒューリスティックが素早く心の中に浮かんだとき

ヒューリスティックによる意思決定の問題

ヒューリスティックの手がかりが誤りである可能性がある。
ヒューリスティックは容易に捏造したり、操作することが可能

自分を納得させる

グループ討議に参加させる、反対の立場の役割演技をさせる、一連の行動をとるように想像させる
などに関係なく、「他者に対してどのような説得的メッセージを伝達したらよいか」
について考えるだけで態度が変化し、それが五か月も持続することがある。

・ケーブルテレビを導入した場合に、あなたの娯楽の幅がどのくらい広がるのか想像してみる。 ・車の販売において、「なぜあなたのような方がこの車を気に入るのか上司が尋ねてくる。
 何て言ったらいいのでしょうか」

その他

〇〇ランキング1位より、友人の体験談や感想のよかったものを選ぶ。

 ランキングは多数の中から選ばれており十分なサンプル数から出来ているのに対し、
 友人はサンプル数として1でしかない。
 友人から直接、具体的に伝えられ、より鮮明なイメージを持つことで
 ランキングの良し悪しよりも友人の評価の良いものを選んでしまう。

広告の繰り返し

 他のすべての条件が等しければ、目にする回数が多いほど、魅力を感じるようになる。
 ブランドの価値を思い出させる良い方法
 新しいものを作り出すよりコスパ良い。
 繰り返すことで退屈で苛立たしく感じられ、広告の効果が減ってくるが、
 バリエーションをつけることでこれを防ぐ。
 携帯電話のCMなんかがまさにそう。
 バリエーションをつけても回数が多くなると、広告の効果が低下する

気をそらす

 説得に対する反論をさせずらくするため、注意を分散する。
 ・商品名を歌にして歌う
 ・奇抜なレイアウト
 ・白黒反転させる
 ・読むことが難しい字体
 ・リズミカルでテンポが速いBGM
 ・時間を圧縮(36秒のCMを2割スピードアップし、30秒にする)

恐怖によるアピール

 運転免許の取得や更新で見る例の動画なんかが良い例

 核兵器削減や薬物乱用防止にも使われているが、その効果が薄いのは、
 核兵器や薬物の脅威を取り除く効果的かつ実行可能であると人々が感じられる勧告がないから。

グランファルーン

つながりを持たない人間同士を、小さい共通点を作ることで連帯感を持たせて説得する。

「私たち新人は、古株のやることには用心しなきゃいけない」
「基本線は同じなんだから、この問題に関しては団結した方がいい」
同郷、同じ大学卒業などもこれにあたると思う。

罪悪感を感じさせる

罪悪感の持つ効果
1.同情:犠牲者に申し訳ないという気持ち
2.補償:悪いことをしたのでそれを償わなければならないという気持ち
3.一般化された罪悪感:悪いことをしたことによって傷つけられた自己イメージを回復しようという欲求

ドア・イン・ザ・フェイス

本命の要求を通すために、まず過大な要求を提示し断らせ、妥協した形で本命の要求を出すことで、
最初から本命の要求を出すより受け入れやすくなる。

フット・イン・ザ・ドア

初めに小さい要求をし、承諾してもらい、徐々に要求の度合いを大きくし、本命の要求を受け入れてもらう。
巷の無料相談やショップの店員の「何かお探しですか?」など。

希少性

手に入りずらいものは価値が高い、と感じる
手に入らない幻の何かをえさに、似たようなもの、廉価版のものを受け入れてもらう。

さいごに

割と前半に出てきた以下の例が衝撃的だったので残しておく。

コピー機を使っている人に頼みごと

「すみませんが、先にコピーを取らせてくれませんか?」
というお願いに応じてくれたのは半分程度

これに一言加えただけで、ほとんどの人が先にコピーを取らせてくれたという。
それはなぜコピー機を使わせてもらう必要があるかの理由を添える、ということ。

それ自体は理解できるが、以下のような意味のない理由でも同様の効果があったということ。
「すみません、コピーを取らなければいけないので、
 先にこのコピー機を使わせてくれませんか?」

コピーを取るつもりがなければコピー機を使う必要がないのだから、
理由になっていないのだが、
これを言うのと言わないのでは差が出るというのだから人間は奥深い。